今年で10年目を迎えた「広島 愛の川プロジェクト」。
「広島 愛の川」は、『はだしのゲン』の作者・中沢啓治さんが生前、未来を担う子ども達に思いを伝えたいと書き遺した詩です。そんな詩を作曲家であり、本プロジェクトの発起人である山本加津彦さんが歌にし、「10年先へ繋ぐ 歌プロジェクト」として被爆70年の2015年に立ち上げたのが「広島 愛の川プロジェクト」です。
おりづるタワーでは毎年8月6日に屋上展望台「ひろしまの丘」にて、子供たちやゲスト歌手とともに「広島 愛の川」の大合唱を行ってきました。
節目となる今年は、島谷ひとみさん、HIPPYさん、加藤登紀子さん、二階堂和美さん、TEEさんを特別ゲストに迎え、プロジェクトに参加した合唱の皆さんとともに平和への想いを歌に込めて届けました。

「広島 愛の川プロジェクト」大合唱の様子
「10年先へ繋ぐ」と掲げて2015年に始まったこのプロジェクトは、10年目を迎える今年、ついにプロジェクトのラストイヤーとなり見納めになりました。
そこで今回は、おりづるタワーでのイベントの様子や、長年にわたりプロジェクトに関わってこられた「広島 愛の川プロジェクト」発起人であり実行委員を務めてきた山本さんと、おりづるタワーの担当・岩澤さんへのインタビューをお届けします。
イベントの様子をお届け!
「広島 愛の川プロジェクト」に参加した子供たちやゲスト歌手の方々は、イベントの第一部として、元安橋の河川敷で行われたとうろう流しの流灯式にて「広島 愛の川」の大合唱を披露。その様子は、おりづるタワー屋上展望台から望むことができました。

とうろう流しの流灯式での大合唱の様子
第二部は、会場をおりづるタワーの屋上展望台に移し、シンガーソングライターである二階堂和美さんのライブからスタート。夕暮れの広島の街を背景に、二階堂さんの思い溢れる歌声と心地よい風が会場を包み、あたたかい雰囲気に包まれていました。
ちなみに、二階堂さんはRCC連続ラジオ小説『お好みたべたい』のナレーターを務められています。戦後、お好み焼を広島のソウルフードに育て上げた“みっちゃん”こと井畝満夫(いせみつお)さんの物語です。是非こちらの記事もあわせてご覧ください。

二階堂和美さんのライブの様子
続いて、合唱の皆さんやゲスト歌手の方々が続々と登場されスタンバイの様子。子供から大人まで、多くの参加者が緊張と期待の面持ちで大合唱の時を待ちます。展望台は端から端まで人で埋まり、海外からの来場者も多く見られました。
準備が整うと、いよいよ大合唱がスタート。
「広島 愛の川」の歌と共に、振付師の夏まゆみ先生が考案された振付が綺麗に合わさります。夕暮れから夜の雰囲気に変わりつつあるおりづるタワーの雰囲気と共に幻想的な時間が流れていました。
被爆80年という節目の年であり、8月6日という特別な日におりづるタワーに響いた歌声は、参加された皆様の想いを一つにし、ご来場のお客様の心にも残るひとときとなったのではないかと思います。
また、今年はテレビでの生中継もあったので、「広島 愛の川」の歌にこめた想いを、テレビの前の方々にも届けることができたのではないでしょうか。

「広島 愛の川プロジェクト」大合唱の様子
「広島 愛の川プロジェクト」発起人の方にインタビュー
「広島 愛の川」の歌を作曲され、「広島 愛の川プロジェクト」発起人の山本さん。
イベントが終わってのお気持ち、そして10年間を振り返っての想いを聞かせていただきました。

「広島 愛の川プロジェクト」発起人の山本さん
——今年でラストイヤーをむかえましたが、10年プロジェクトを続けてきて、イベントを終えられた今のお気持ちをお聞かせ下さい。
「まずは、この10年を温かく支えていただいた方々に感謝の気持ちでいっぱいです。広島マツダの皆様、おりづるタワー事務局の皆様には本当にお世話になりました。
2014年に松田哲也さんに初めてお会いした際、まだ建築前のおりづるタワー屋上階からの景色と、その想いを聞かせていただきましたが、その後にプロジェクトが始まり、完成直後からおりづるタワーでも歌わせていただくようになりました。2025年、10年続けた後に、こんな景色で、しかも半数は当時生まれてもいなかった子供たちが歌っている場面を見て、続けてこられて良かったと心の底から思いました。
今回、一般の参加者は約170名いましたが、そのうち105名は2013年生まれ以降の小学生でした。2012年末に中沢啓治さんが亡くなった後に生まれた子供たちです。
預かった『広島 愛の川』の詩と思いを、途切れないよう、次の世代に届けたいと思って10年続けてきましたが、その子たちが歌っているのを見て、10年続けたことの持つ意味をしみじみ実感できました。」
——広島 愛の川プロジェクトを立ち上げたいきさつをお聞かせ下さい。
「2013年に中沢啓治さんの奥様から詩を預かり、作曲しました。初めは、一人も知り合いがおらず、なぜか反対されるばかりのスタートでしたが、詩を預かった責任を果たしたくて、子供たちに残したくて、何度も広島に滞在しました。
その中で、いろいろな方に出会い、たくさんの方に協力いただけるようになり、2015年にひろしまフラワーフェスティバルのフィナーレにて約250名で歌ってもらい、新聞にも大きく載って、盛り上がったような気がしましたが、直感的に10年後には何も残っていないだろうと感じました。
1年で終わったら意味がないな、でも10年続けたら何かあるかもしれない、やってみなければわからない、ならやろう。そんな根性試しみたいな部分もあり、10年続けるプロジェクトとして立ち上げました。大変でしたが、支えてくれた方々のおかげでなんとか続けることができました。」
——今後の活動に向けての予定やお気持ちなどあれば、お聞かせください。
「このプロジェクトは今年で最後と宣言していました。本音と理想では、10年間で成長した子供たちの中から、バトンタッチ出来る子が現れたらいいな、と胸に秘めていましたが、いずれにせよ僕が仕切らないと続かないようなものだったら、いつか終わるので。
そうしたら、今年の催しの終了後、20歳くらいの世代の子たちが、『次の10年先へは私たちが繋ぎます』と言いに来てくれました。
まだどうなるかわからないですが、初年度に小学生だった子たちが中心となって、広島 愛の川プロジェクトの第2章が始まるのであれば、とても嬉しく、支えていきたいと思います。最初は、ミニマムでのスタートになるかと思いますが、また、おりづるタワーで歌えるような形になったら、ぜひ歌わせていただけると嬉しいです。よろしくお願い致します。
ここまで広島 愛の川プロジェクトを支えていただき、本当にありがとうございました。」
おりづるタワー担当者にインタビュー
2016年のスタート時より、毎年「広島 愛の川」の合唱を見守り、今年はメインでプロジェクトに関わった、おりづるタワーの岩澤さん。
当日イベント直前に、インタビューにお答えいただきました。

おりづるタワー「広島 愛の川プロジェクト」担当者 岩澤さん
——今年の「広島 愛の川プロジェクト」に向けてどのくらいの期間、準備をされてきたのですか?
「打合せが今年の春頃より少しずつスタートしました。直近で、細かい作業を進めていった形です。毎年のことなので、春頃から動き出しました。」
——イベントに込められている思いをお聞かせください。
「被爆80年という年で、世界各国や日本全国からお越しいただいているので、思いがこもった歌を大勢の方に聞いていただきたいです。子供たちの合唱も、広島テレビで中継されるということで、何か平和や未来について考えるきっかけになればいいなという思いでやっています。(準備する中で)大変な面もありますが、上手くいくよう頑張っていきたいなと思っています。」
——今年で「広島 愛の川プロジェクト」はラストイヤーとなりますが、今のお気持ちはいかがですか?
「バタバタしていてじっくり味わう瞬間がなかったのですが、先程リハーサルを見ていて、今年最後なのだなと実感してきました。合唱の皆さんの迫力や歌に心が凄く動かされ、私がここでおりづるタワーにいられた事が良かったなと感じる時間でもありました。本番を楽しみに思う半分、終わることに寂しさを感じています。」
——おりづるタワーの今後の活動に向けて、岩澤さんの思いを教えてください。
「おりづるタワーが未来に向けて、広島の良さや平和の大切さを感じていただける所として発信していけたらという思いが1番大きいので、来場されたお客様にそれぞれの平和を感じていただきたいです。
戦争がないことも平和だし、家族や友人と来ても、ひとりで来ても、ゆっくり過ごせる時間自体が平和だと思います。それぞれの時間を過ごして、未来について考えていただけるきっかけとなれば良いな、という思いで今後も活動出来たらと思っています。」
「広島 愛の川プロジェクト」は今年で幕を閉じますが、おりづるタワーでは現在、「ミウラ ヒロシマ」写真展を開催中です。常設の展示はもちろん、ぜひ写真展にも足を運んで、おりづるタワーから発信される“未来への願い”を感じてみてください。
おりづるタワーの催し案内
▷写真家・三浦憲治氏による「ミウラ ヒロシマ」写真展
三浦氏が過去11年にわたり故郷・広島の“今”を撮影した写真をもとに被爆80年の節目に広島市内で「ミウラヒロシマ」写真展を開催。1970年代よりレッド・ツェッペリン、ピンク・フロイドなど洋楽のライヴを撮りはじめ、松任谷由実、矢沢永吉、Y M O、井上陽水、奥田民生など多くのアーティストを数十年撮り続けてこられました。
2014年より広島をテーマにした写真展「ミウラヒロシマ」を毎年開催し、2025年で12年目を迎えます。広島に暮らし、広島を訪れるすべての人の心の中に、一人一人の「ヒロシマ」があることを、三浦憲治氏の写真は教えてくれます。
・開催期間:開催中。8月31日(日)まで
・「ミウラヒロシマ」公式HP:https://dps.shogakukan.co.jp/miurahiroshima/


三浦憲治氏による「ミウラ ヒロシマ」写真展