2025年9月23日、おりづるタワーは開業から9周年を迎えました。
これを記念して「ART BORN HIROSHIMA」のアーティストによる作品展示をはじめ、参加型アートイベントやオリジナルグッズ販売など、多彩なイベントが開催されています。今回はこのイベントを取材し、参加アーティストである大沼寛明さん、そして開業から歩みを見守ってこられたおりづるタワーの大上社長にお話を伺いました。
9周年イベントの企画テーマは…?!

9周年イベントのテーマは「FLOWER : Art in Bloom ひとつの種が、幾重にもひらく」。
会場には、「ART BORN HIROSHIMA」に所属する9名のアーティストによる作品が並び、フロアを鮮やかに彩りながら、訪れた人々を迎えていました。アーティストの作品展や参加型アートイベント、オリジナルグッズの販売を通じて、芸術とそれぞれの想いが花ひらく時間をお客様に感じていただきたいという主旨で開催されています。
アーティストはこのテーマに沿って作品を選定し、作品に込めた想いを花のように咲かせ、個性豊かに表現しています。こちらの展示は9月30日まで行われており、購入も可能です。


アーティスト×お客様による参加型アートイベント
12階おりづる広場に入って目を引いたのは、巨大キャンバス!
こちらは、「ART BORN HIROSHIMA」所属アーティストの宮本拓也さん・大沼寛明さんと、お客様が共につくりあげる、“参加型アートイベント”です。9月19日~23日の期間中、お客様に折り紙へ自由にアートを描いていただき、はさみ・のりを使って巨大キャンバスに貼りつけたり、ペンで直接描き込んだりして、少しずつ作品を完成させていきます。
イベントのテーマは「みんなで大きな花を咲かせよう」。来場者の絵やメッセージを花びらに見立てて、花びらが集まって大きなお花になる、という想いが込められています。
19日の朝、宮本さんと大沼さんが準備した「下絵」が描かれた巨大キャンバスがお目見え!

キャンバスには宮本さんが無数の花を描き、右上を中心として花が集まる様子を“おりづるタワー”として表現されています。そして、水色を基調とする大沼さんの絵には、自画像的キャラクターの“クラウドくん”たちが描かれています。キャンバスで左右に分かれる大小2つのクラウドくんたちが、時間の流れや成長している様子、未来に向かって前に進んでいる様子を表現しています。
期間中、お客様の想いがこもった折り紙がどんどん貼り付けられ、にぎやかで個性あふれる絵に仕上がっていきます。日ごとにお客様の絵が重なり合っていく様子はまさに花が咲いていくようでした。




そして9周年当日の9月23日、アーティストのお二人によって仕上げられ、様々な人の想いが重なって完成した「大きな想いの花」がついに出来上がりました!
こちらの作品は、10月末まで12階おりづる広場にて展示されていますので、ぜひ足を運んでみてください。

「ART BORN HIROSHIMA」アーティスト・大沼さんへインタビュー
ここからは、アーティストの大沼寛明さんのインタビューをお届けします!
大沼さんは、先ほども登場した“クラウドくん”などをモチーフにポップでカラフルな作風が特徴のアーティストです。イギリスの芸術大学を卒業後、オランダを拠点に活動され、2024年に帰国してからは広島を拠点に制作を続けられています。現在は「ART BORN HIROSHIMA」に所属し、広島を中心に活動の幅を広げています。


大沼さんにとって、今回のような参加型アートイベントは初めての経験とのことです。
9周年企画に込めた想いと共に、イベントで感じたことを聞かせていただきました。

——今回、参加型アートイベントを実施してみていかがでしたか?
「最初はどれくらいの方が参加してくれるのかなと少し心配していましたが、日曜日には一日で100人くらいの方に描いていただき、『結構参加してくれるな』と思い安心しました。大人から子供まで、海外の方も描いてくれて、嬉しかったです!」
——宮本さんとのコラボ企画でしたが、キャンバスはどのように制作されたのですか?
「最初、宮本さんと2人でART BORNで白いキャンバスを広げて、即興的に『とりあえず描いちゃおう!』と下絵を描き始めました。お互い、“子供”や“平和”など、テーマ性で共通している部分があるので、あえて細かく打合せをせずに描き進めました。音楽をかけながら和気あいあいと始め、2時間でぎゅっと集中して描きあげました。宮本さんは集中力がある方なので、一気にバーッと描いていました。」
——おりづるタワーという場所で展示できることについて、どのような想いがありますか?
「原爆ドームの隣にあるおりづるタワーは、広島にとって特別ですごく神聖な場所だと思います。原爆のことや平和について考えさせられる、そんな場所でやらせていただくのはすごくありがたいです。
今回おりづるタワーで絵を描かせていただいたのは2回目で、初回は今年のGWに大きな2mくらいの折り鶴にライブペイントをさせていただきました。その時にも思ったのですが、すぐそこに原爆ドームが見える場所で、原爆ドームを見ながら描くというのが不思議な気持ちでした。その時はいつもより色彩を抑えて、楽しさの中にも静寂や凛としたものを表現しました。
今回も、平和や楽しさ・夢を全面に感じられるような作品をつくりたいと思い参加しました。」
——今後挑戦してみたいことや、今後の活動予定を教えてください。
「『ART BORN HIROSHIMA』に所属してから、おりづるタワーの企画や広島市のアート事業(スマートごみ箱のデザイン)や企業の壁画制作依頼など、様々な活動機会をいただいています。今まではキャンバスに描いて、ギャラリーで展示をするのが主な活動だったのですが、これからはもっと外に自分の作品を広げていきたいなと思います。パブリックアートとして街の中で自分の作品が見られるような活動を続け『この作風の絵、いろんなところで見るな』と思ってもらえるようにしたいです。
直近では、今年の11月に開催される『ART BORN JAM 2025』というイベントに参加します。ワークショップをしたり、ミュージシャンの方を呼んでお祭りをするので、それに向けての制作をしています。著名なサックス奏者・キーボード奏者と一緒に数曲ラップも披露する予定ですので、ラップの練習を進めています!」
そんな大沼さんが今回おりづるタワーで展示する作品は“幸運のゾウさんシリーズ”です。

大沼さんコメント:「インド人が見る宇宙のイメージ絵を見たことがあって、それがゾウさんが地球を持っているイメージでした。それを見て、ゾウさんって偉大だな、かわいいなと思って描きました。」
「ART BORN HIROSHIMA」による作品は他にも…!
会場には、新たにデザインされた8体の「おりづるオブジェ」もお目見えしました。
こちらもART BORN HIROSHIMAのアーティストによる作品で、それぞれ個性豊かなオブジェが折り鶴を折るテーブルに並び、来場者を楽しませます。
また、9周年限定アイテムとして、Tシャツやトートバッグ、デザインシールなど、アーティストがデザインしたオリジナルグッズも販売されました!


おりづるタワー・大上社長~9周年を迎えたことへの想い~
最後に、開業前からおりづるタワー事業に携わってこられた大上社長にお話を伺いました。


——2016年9月23日に開業して9年が経ちました。9周年を迎えられる率直なお気持ちをお聞かせください。
「9年の間に、KITTE大阪など店舗を拡大した中で、自分達の立ち位置や想いを、お客様やいろんな人から(逆に)教えていただく事が1年1年増えていきました。
単純に観光施設を運営しているだけだと、『暇だから』『有名だから来た』など訪問理由はあると思いますが、 おりづるタワーに関しては、松田会長が考えられたおりづるタワーのコンセプトや、我々が何をしているのか、それを知った上で訪れてくれる人が増えてきているように感じます。」
——お客様の評価も年々高まっていると伺いましたが、その点はどのように捉えておられますか?
「開業当初、Googleの口コミ評価は『3.2』という状況からスタートしています。そこから9年間の継続的な取り組みを重ねた結果、口コミ数が3,800件まで増加し、今年ついに評価も『4.0』に到達することができました。お客様に値段以上の価値を見出してもらうという意味で、おりづるタワーのコンセプトを、我々も共感して邁進したというのが、結果的に今につながったと思います。
今、何が変わったかというと、お客様の大半が何のために来たのかを語ってくれるようになったんですよ。我々が思う未来だったり平和だったり、感じてほしいと思っていることを、お客様から発信してくれたり、スタッフに語ってくれるようになってきました。これこそが9年続けてきた成果だし、ダイレクトにお客様から受け取る事が多くなったということが、9年間の歩みだと思っています。」
——今回の9周年イベントに込められた想いを教えてください。
「ART BORN HIROSHIMAの大半が広島出身で、おりづるタワーのコンセプトにも共感してくれているので、同じ想いを持ってイベントができるんじゃないかと思ったのがスタートです。
今年の8月、アーティストの宮本さんにおりづるタワー12階で個展をやっていただきました。絵の販売と共に、絵の説明をしていただきましたが、これが想像以上にお客様とのコミュニケーションを生み出しているというのに気が付いたんです。お客様の反応を見ると、アートがより身近になっているというのを感じました。
その時の感触もあり、今回もおりづるタワーの想いとART BORN HIROSHIMAの想いの両方をお客様に知っていただける企画になるんじゃないかなと期待しています。」
——今回のイベントを通じて、来場されたお客様にどんな感想を持っていただきたいですか?
「大半のお客様が、原爆ドームや平和記念資料館で歴史や事実を知った上でおりづるタワーに来ると思います。おりづるタワーは(未来を志向するという意味で)それらとの対比なので、いまお客様が穏やかに景色を見たり、アートを鑑賞できるというのは、翻って日本が平和であるということを感じて頂ければと思います。単純な平和論や未来論を押し付ける訳ではなく、自分がなぜこの場所に、こういう風に穏やかにいられるのか?ということを今回のアートイベントも含めて自然と感じて頂きたいですし、おりづるタワーはそういう場所だと思っています。」
——これからのおりづるタワーが発信していきたいことをお聞かせください。
「まだまだおりづるタワーの存在を知られていないという事実はありますが、一方で知ってくれている方も増えてきています。今期は過去最高の入場者数となり、右肩上がりなので、これを続けていきたいと思います。
今までは日本を中心に情報発信していましたが、今後は世界に向けて発信していくことにも注力していきたいと思っています。」
10周年に向けて
おりづるタワーは2016年の開業以来、“平和を見つめ、未来を考える場所”として歩みを重ねてきました。9周年を迎えた今回のイベントには、その歩みを祝うとともに、新たな挑戦へと踏み出す思いが込められていました。
子どもたちが自由に色を重ねる姿や、お客様とアーティストが言葉を交わしながら一つの作品を完成させていく様子は、まさに今回のテーマ「FLOWER : Art in Bloom ひとつの種が、幾重にもひらく」の通り、“ひとつの種から広がっていく可能性”を体現しているようでした。
来年はいよいよ開業10周年を迎えます。 おりづるタワーはこれからも、広島の魅力や平和の大切さを感じていただける場所として、世界中に発信し、人々が共に未来を考える場であり続けます。
イベント情報
9周年イベント「FLOWER : Art in Bloom ひとつの種が、幾重にもひらく」
▷「ART BORN HIROSHIMA」作品展、9周年記念オリジナルグッズ販売、おりづるオブジェの展示
・開催期間:9月30日(火)まで
▷参加型アートイベント「みんなで大きな花を咲かせよう」 完成作品の展示
・開催期間:10月31日(金)まで
・展示場所:おりづるタワー12階“おりづる広場”
■ART BORN HIROSHIMA
・営業時間:11時~18時
・定休日:火曜日
・住所:広島市中区幟町14-3 広島電鉄「銀山町駅」すぐ


